写真集 海外の写真家

ここでは海外の写真家の写真集を紹介しています。同じカメラという道具で写真という世界共通のフォーマットによって作られた作品に、海の向こうではこうも違った世界、景色、視点があるのかということが分かります。ポートレートしかり、色使いなんかも日本で流行りのものとは、やはり異なる良さが多分にあります。 

日本の写真と海外の写真の相違は、例えるならばJポップかロックンロールかというような感じでしょうか。優劣を付ける気は毛頭ありませんが海外ではアジア地域の写真家も含め、写真ツールに対する概念やその表現の本質へのアプローチ、その辺りに違いがあるのだと思います。写真は視覚を具体化する表現であるため、写真家の出自も含めて置かれている環境に大いに影響されるものですね。 

写真集という物について、海外での写真はいわゆるアートとして絵画などとほぼ同等の価値観で見なされます。それゆえか本の装丁や印刷に力が入っているものも多く、書物自体としての価値が高い写真集でもある。そういう点が海外の写真集のいいところです。

 


All about Saul Leiter ソール・ライターのすべて

21cm × 15cm 307項 ペーパーバック

 

ニューヨークで活動していた写真家、ソール ライターの写真展図録です。展示作品にもある代表作が網羅されており、彼の魅力がこの一冊に詰まっています。おおまかに内容を分類すると、ハーパーズバザーで仕事をしていた時代のファッション写真、ライフワークとしていたニューヨークのスナップ写真、自室でのヌードセッション、水彩画がびっしりと掲載されています。ところどころに彼の名言が挿入されており、それらの言葉からソール ライターという人の創作への姿勢、意識が窺えます。一つ引用すると、

 

“A photographer's gift to the viewer is sometimes beauty in the overlooked ordinary . ”

(写真を見る人への写真家からの贈り物は、日常で見逃されている美を時々提示することだ。)

 

というものがあり、写真に親しむ人への知己に富んだ文句ばかりです。

そしてその言葉通り正に彼のスナップ写真は我々に、日常風景に垣間見られる美しい景色を見せてくれます。対角線の使い方、被写体配置に特徴のある構図に、傘、ガラス越し、後ろ姿というモチーフ、スナップの手本とも言えそうです。ブレッソン、ドアノーとは異なるセンスが感じられます。中でもカラー写真は1950〜60年代の街の空気感も相まって秀逸です。そしてそれら一枚いちまいに作者の愛情ある眼差しを感じるのは、私だけではないと思います。

展示では見応え十分なサイズで作品を鑑賞できましたが、本書はやや小ぶりな印象です。しかしサイズ感を補って余り有るほど中身は充実しています。観覧を終えた直後、迷わず手に入れたくなりました。

 

写真家 ソール ライター展について

ソール ライター財団のサイト


Diane Arbus: An Aperture Monograph

ハードカバー 28.5cm × 24.5cm 80photo

 

Diane Arbus(ダイアン アーバス)はアメリカ ニューヨーク生まれの女性写真家です。写真に興味があるという方なら一度は、ダイアン アーバスの作品を見たことがあるのではないでしょうか。それほどに写真界に影響を与えた写真家です。

本書は彼女の代表的な作品が収められたモノグラフです。

 

ダイアン アーバスは1923年に生まれ18歳で結婚しました。写真を撮り始めたのは1940年代になってから、ベレニス アボットに学んでいます。他、アレクセイ ブロドヴィッチ、そしてリゼット モデルにも写真を学びました。彼女の写真が初めて使われるようになったのはエスクァイア、それからハーパーズバザーを始め有名ファッション誌の撮影を手がけるようになります。

 

商業撮影のかたわらで"アメリカの儀式、マナー、慣習"をテーマとした作品を撮りため、グッゲンハイム助成金を与えられます。それからアメリカを横断しながら撮影を行い、作品はニューヨーク近代美術館で展示されました。

 

1960年代に入りデザイン学校や大学で教鞭を取りながら、作品を撮り続けていきます。この頃取り組んでいたテーマが、精神的に障害を持つ人や一般とは異なる嗜好を持つ人々のポートレートです。こちらの作品群がダイアン アーバスの代表作となっています。特に本書の表紙にもなっている双子の写真は有名で、彼女のポートレートは多くの写真家の作風に影響を与えました。

残念ながら彼女は、1971年に自ら人生に幕を閉じてしまいます。しかしその翌年から大規模な展覧会がアメリカとカナダで開かれ、彼女の作品は多くの人々の目に触れることとなりました。

 

この写真集では主にダイアン アーバスのポートレート作品が掲載されています。一見奇妙に思える被写体ですが、そこにポートレートの本質、被写体と向き合うということがよく表れているように思います。対面式のポートレートって最近、減っているように思うのです。特に日本では肖像権だとか勝手にSNSにアップされてなんて、揉める原因ばかりなのもあるでしょうけれど。

カメラを構える人、カメラの前に立つ人みたいなシンプルな構図、こういうポートレートはあまり古さ感じないなと思います。流行りのポーズや、はにかむ姿もいいのだろうけれど、普遍的なり得る写真と、そうでない写真とがポートレートにはあります。

 

  


エフューシス「EFFUSUS」 - RON VAN DONGEN

ハードカバー 42.4cm × 34.4cm 56項 32Photo

 

RON VAN DONGEN(ロン ヴァン ドンゲン)はアメリカの写真家です。オレゴン州ポートランドを拠点に活動しています。

 

ファッションデザイナー ラルフ・ローレン氏は『彼の作品を見ているとインスピレーションが湧いてくる』と言わしめ、ニューヨークを始めアメリカのブティックにロン ヴァン ドンゲンの作品を飾るほど。

 

しかしロン ヴァン ドンゲンの作品を見ればそれも大きく頷ける。なぜなら彼の写真は非常に美しい!あえてもう一回、非常に美しい!!

その存在感、形態美、色彩の全てが、単なる花の写真という枠には収まり切らない。一輪いちりんに個性があり、花に対するリスペクトが溢れ出ている。正直なところ花や動物は愛でたりすれど、人間に対するのと全く同じ感情では触れられなかった。けれどこの写真集を見ると、そんなぼくでも花と向き合うことが出来る。

 

 

ロン ヴァン ドンゲンは自ら、種や芽から花を育てるそうです。撮り頃?が来たら大判カメラで撮影する、そういう手法だそうです。本書では接写が多いですが、飽きるどころかページをめくる度に圧倒されることになるでしょう。

 

彼の写真はHPでも閲覧できますが、写真集の方が迫力あります。そして写真集自体効果になってきているので、お早めにご覧になってみてください。まさしく花のポートレートというに相応しい、そんな写真集です。写真も大きく見応え十分、クロス装丁でタイトルはエンボス加工が効いています。ぜひ書斎に一冊は入れておきたい写真家です。

 

RON VAN DONGENのオフィシャルHP

 

 


Guy Bourdin (55s)

ハードカバー 14.3cm × 16.3cm 128項

 

 

Guy Bourdin(ギー ブルダン)はフランスの写真家です。ファッション雑誌VOGUEで活躍しました。1970~80年代を代表するファッションフォトグラファーです。

 

本書はギー ブルダンのモノグラフです。主に女性を被写体としたグラマラスでシュールレアリスティックな写真は、それまでのファッション写真に新風を吹き込みました。計算された構図や写真に組み込まれているストーリーは、今見てもオシャレだと思います。やはり本場のファッションフォトグラファーの撮る写真は素敵ですね。

 

ただこの写真集はサイズが小さめなので本棚には収まりやすいですが、写真も小さいのが残念です。でも印刷はなかなか綺麗です。

 


Yousuf Karsh (Stern Fotografie)

ハードカバー 29.2cm × 37.5cm 96項

 

 

Yousuf Karsh(ユーサフ カーシュ)はトルコ出身、カナダ人写真家です。多くの著名人のポートレトを撮影したことで有名です。

中でもヘミングウェイ、モハメド・アリの手、そしてオードリー・ヘップバーンのポートレートは最高に好きです。

 

本書はYousuf Karshのポートレート写真集です。彼の代表作が概ね掲載されているかと思います。当時のハリウッドスターやローマ法皇、イギリスの首相であったチャーチルなども撮影しています。被写体の持つ存在感を捉えながらも、印象的なのは度々横顔を向けているポートレートです。まさに表紙のオードリーもそうですが、こういう肖像写真はかえって新鮮に感じられました。

 

編集に関して、Stern Fotografieはシリーズとして著名な写真家の写真集を刊行しています。大判本で写真も大きく見応えがあり、印刷も悪くないです。本書でも臨場感のあるポートレート写真がご覧になれますのでお薦めです。

 

Yousuf Karshについて詳しくはこちら

 

 


You Left Your Ring on the Floor of My Bedroom - Valerie Phillips

ペーパーバック 20cm × 17cm 118項

 

Valerie Phillips(ヴァレリー フィリップス)はニューショーク出身の女性ファッションフォトグラファーです。NYLONなどの海外ファッション雑誌、stussy、Reebok、Dr.Martensなどの広告撮影、海外アーティストのジャケ写を手がけているフォトグラファーです。

Valerie Phillipsの写真は雑誌にしても広告にしても、モデルがなんと生き生きとした表情、そして動きあることかと見ていて面白いです。何しかオシャレ、ストリートファッション的な感じが、自分のカルチャーに近いのもある。トラディショナルなファッション写真の枠を飛び出し、モデルとのフォトセッションにおいて、そのポテンシャルを引き出すことに長けたフォトグラファーだと思います。

 

本書はValerie Phillipsがインスタグラムの友達の友達の友達のSARAという女の子に一目惚れし、撮影を依頼したところから生まれた一冊です。Skypeなどでのやり取りを経てValerie Phillipsが彼女をロンドンに招くのだけれど、空港で税関か何かのトラブルに見舞われて、11時間しかロンドンに滞在できなくなってしまいましたとさ。でその初対面の11時間で撮影したときの写真集がこれです。そういう事情もあって撮影は夜のストリート、Valerie Phillipsの部屋で行われたそう。

そのストーリーにも面食らって、とても初対面とは思えないエネルギッシュなスナップショットばかりです。波長が合うのかフォトグラファーのスキルかモデルのポテンシャルか、おそらくそれら全てがいい塩梅に合わさるとこういう撮影が出来るんだろうなと勉強させれました。

 

ぼく的には案外、日本人のアイドル写真やグラビア写真ではこういう感じってしないのです。写真集というか人気若手モデルとブランドのタイアップ本みたいなのってあるけれど、あの感じに近いと言えば近いし、でもやっぱりこの手のファッション、スナップって海外のフォトグラファーが本家だなと思います。ぼくらが輸入している以上、そのように感じられることもあるでしょう。

日本人が海外ロケっつってもすぐ有名な場所に行くというか行かざるを得ないのかも知れないけれど、あっちの人ってその辺でもこういうことさらっと出来ちゃうのは、地の利もあれば元々の感覚の違いなのかなぁ。

 

 

 Valerie Phillipsについて詳しくはこちら

 


ConcordeーWolfgang Tillmans

ペーパーバック 24cm×16cm 132項 62photo

 

フォトグラファーというか写真アーティスト、ティルマンズの作品集。今はお役御免となったコンコルドが飛んでるところを撮った写真集。全ページ写真のどこかにコンコルドが写っています。ティルマンズはコンコルドが好きで、コンコルドが飛んでいるのを見かけたときはとにかくシャッターを切ったとか何とか、どこかの書店のレヴューで見た気がする。

 

写真点数の割にパターンが少ないように思えるけど、地上から空の飛行機を目で追っている、視界から見えなくなるまで見つめているとこんな風になるのかも知れない。

好きなものを素直に雑味なしに見る、子供の頃の眼差しは忘れたくないと気付かせてくれます。

 


FlowersーRobert Mapplethorpe

ハードカバー 27cm×32cm 108項 50photo

 

ロバート メイプルドープの代表作。圧倒的な花の写真群です。肉眼で見る花よりも美しく、そして妖艶であり、手で触れそうなくらいリアル。花の写真集は数多くあるけれど、ぼくにとってこの作品集が一番だと思います。写真が凄すぎて言葉でいちいち説明する気になれない。

 

日本のトップフォトグラファーである上田義彦氏が師事しておられるのをはじめ、世界中の写真家が影響を受けたのは間違いないでしょう。

 

ロバート メイプルソープの写真を見たい方

 


European Fields: The Landscape of Lower League Football / Hans Van Der Meer

ハードカバー 30cm × 21.4cm 176項 83photo

 

 

Hans Van Der Meerのよるヨーロッパ各地でサッカーの下部リーグの試合を撮影した写真集。“Hans Van Der Meer: Bhutan-Monserrat - The Other Final"との違いは、純粋に各試合の一場面を集めたものということ。のんびりとした風景をバックに行われる試合の1シーンが1ページ毎に納められています。

 

サッカーの写真集というのでもなく風景写真というのでもなく、サッカーの試合の一コマを集めた群写真とでも言えばしっくりくるかな。サッカーというスポーツは誰しも知っていると思うけれど、サッカーに限らず何かに熱中している人間の姿というのは、端から見るとこんなにもユーモラスに思えるのですね。しかもテレビで中継されるようなトッププロのリーグじゃないからかある種の“ゆるさ”も感じられて、コートの横に鹿が群がっていたりソックスバラバラだったりグラウンドが落ち葉だらけだったりで、大体おっちゃんたちが試合している。脇の家から見ている数少ないギャラリーとか。

 

サッカーというスポーツももちろんすばらしいですが、その試合にこのような視線を持って瞬間を切り取る撮り手のセンスに脱帽です。経験者が見ても、これどういうプレーの後に撮れるんだ?みたいなシーンもあって面白いです。

BLUE HEARTSのホームラン聴きながら読むといいですね、スポーツ変わりますけど気分的にはそんな写真集です。

 


Hans Van Der Meer: Bhutan-Monserrat - The Other Final

ソフトカバー 23.1cm×13.3cm 146項 116photo

 

2002年6月30日当時、サッカー世界ランキング202位のブータンと203位の英領モンセラトの国際Aマッチを追った写真集。試合はブータンで行われ、開催の9日前からの街の様子と試合とを撮っているのかな。

 

長閑な風景と友好的な空気感が漂い、サッカーというスポーツの写真というよりもサッカーの国際試合が行われるブータンのとある街の、9日ないし10日の様子を押さえたドキュメント系ミニシアター映画を見ている感じ。

 

ブータンもモンセラトも世界の国々の中ではとても小さな国であり、それぞれ仏教とキリスト教徒の違いはあっても信心深い。その上、決してサッカーが盛んなわけではないとい共通点があります。今日では世界最大規模の人気を持つサッカーというスポーツの試合が、そのような国同士で行われることを通して現代の商業主義的なスポーツの在り方への皮肉と、本来われわれが持つべき純粋な精神性を見出しうるのではないかとの意図が序文から伺えます。

 

サッカーにを知らなくても信じる神様がいないという方でも、広がる田んぼ、山に落ちる雲の影、平和な空気、見ているだけでブータンに行きたくなります。

 


Cape Light / Joel Meyerowitz

ペーパーバック 22.9cm × 26.3cm 112項 50photo

 

ジョエル・マイロウィッツの代表作、オリジナルは1979年発売。アメリカ合衆国マサチューセッツ州のケープコッドで1976年から1977年の間に撮影されたものだそうです。

ケープコッドの海と空がとてもきれいで、移り行く時間のスピードがとても心地よく感じられます。風景写真とか街のスナップというのとは違うけれど、光の色というか光に作られる色が8×10カメラとネガフィルムを使ってうまく捉えられています。

 

写真じゃなきゃ出来ないこと、ネガじゃないと出せないトーンというのが正にこういうことなんだなぁと思います。何を撮るかとかどう撮るかとかってついつい頭でっかちになりがちな自分に、もっとシンプルにやればいいし、見たものをきちんと撮ればいいと教えてくれるような教科書的写真集です。

 
 

Jimdo